2026年のドイツ競馬は、トルカータータッソの凱旋門賞制覇やアルピニスタ世代との国際戦で存在感を示した時期と比べれば絶対的な世界級スターを欠く一方、夏に入って3歳勢から興味深い馬が続々と台頭している。8月24日時点で国内最高クラスの評価を受けているのがブライトライト(Bright Light)とソレアンガ(Soreanga)。そこへセグーロ、ドイツダービー馬ダルダノス、古馬グローバルヘルスなどが続く。特に2400m路線では、9月のバーデン大賞から秋の欧州G1へ向けて「世界で戦えるドイツ馬」が現れるかが最大の焦点となる。

現在のドイツ調教馬・主要勢力

カテゴリー中心馬2026年の主な実績・評価
3歳・2400mブライトライト(Bright Light)ベルリン大賞2着・GAG97kg
3歳牝馬ソレアンガ(Soreanga)独オークス1着・GAG97kg
3歳・2000mセグーロ(Seguro)G3・2勝、ダルマイヤー大賞4着・GAG96kg
3歳・2400mダルダノス(Dardanos)ドイツダービー1着・GAG96kg
古馬2400mグローバルヘルス(Global Health)ハンザ大賞1着・GAG96.5kg
3歳中長距離ゴスタム(Gostam)GAG96kg
古馬牝馬サンタガーダ(Santagada)ハンザ大賞2着など
短距離パーシング(Pershing)ホッペガルテン飛翼賞1着

現在のトップ候補はブライトライト

現時点で最も「国際G1に近いドイツ調教馬」と評価したいのがブライトライトだ。8月9日のベルリン大賞では英国の実力牝馬ティファニーを相手にクビ差の2着。直線で外から猛追し、あと数メートルあれば逆転していたのではと思わせる内容だった。

この一戦を受けてGAGは97kgまで上昇。現在のドイツ3歳上位馬の中でも最高水準となった。しかも2400mで古馬一線級を相手に結果を残した点が大きい。A.スボリッチ調教師はレース後、9月6日のバーデン大賞から凱旋門賞へ向かう構想を明言しており、特に柔らかい馬場を歓迎している。

ドイツ馬は伝統的にタフな芝と2400m以上で能力を発揮するタイプが多く、ブライトライトもその系統に近い。バーデン大賞には海外の有力馬も多数登録しているため、ここで再び上位争いができれば凱旋門賞でも「単なるドイツ代表」以上の評価が必要になる。

牝馬のエースは独オークス馬ソレアンガ

3歳牝馬ではソレアンガが頭一つ抜けた。8月2日のドイツオークスにあたるディアナ賞では、フランスから遠征してきた1番人気ラポテオーズらを相手に完勝。A.ヴェーラー厩舎にドイツダービーとのクラシック二冠をもたらした。

この内容によってGAGは97kg。近年のディアナ賞勝ち馬では2017年ラカザール以来の高水準で、2025年勝ち馬ニコレニの94.5kgを大きく上回る。欧州他国のオークス馬と比較しても、英オークス馬サンダリングオン98.5kg、愛オークス馬ヨハンナウォルシュ98kg、仏オークス馬ダイヤモンドネックレス97.5kgに近く、数字だけなら欧州3歳牝馬の上位グループに入る。

今後古馬や国外G1を相手に同じ走りができるかは未知数だが、2026年ドイツクラシックで最も説得力のある勝ち方をした馬と言っていい。

セグーロは2000m路線で最も計算できる存在

セグーロも3歳勢では重要な一頭だ。春のJRAダービートライアルを勝ち、7月には古馬を相手にG3ロット・ハンブルク大賞を制覇。続く2000mのG1ダルマイヤー大賞では海外勢を相手に4着となり、ドイツ調教馬では最先着を果たした。

勝ったホタゼル、2着タイムフォーショーケーシング、3着ウィンブルドンホークアイはいずれも外国調教馬。それでも3歳のセグーロが古馬G1で1馬身半程度の差に踏みとどまった内容は高く評価でき、GAGも96kgまで上昇した。

2400mより1800~2000mに適性がありそうで、ブライトライトとは異なる形でドイツの国際戦線を担える存在。スボリッチ厩舎がブライトライトとセグーロというタイプの異なる3歳馬を抱えている点も今年の特徴だ。

ダービー馬ダルダノスは評価を立て直せるか

ドイツダービーを制したのはダルダノス。単勝84.8倍という同競走史上最大級の大穴で、18頭立ての好位から抜け出してチーフランドに1馬身差をつけた。

一躍世代王者となりGAG96kgを与えられたが、古馬との初対決となったベルリン大賞では10頭立ての最下位。前年ドイツダービー馬ホッホケーニヒも9着で、ダービー馬2頭が揃って大敗する結果となった。

このため現時点では、「ダービーを勝ったダルダノス=ドイツ3歳最強」と単純には考えにくい。古馬G1でクビ差2着のブライトライト、2000mG1で4着したセグーロ、強い内容でディアナ賞を勝ったソレアンガの方が国際的な物差しでは評価しやすい。

古馬ではグローバルヘルスが一番手

古馬の中心はグローバルヘルス。7月のハンザ大賞では18.9倍の伏兵評価を覆し、サンタガーダに2馬身3/4差をつけてG2初制覇。GAG96.5kgまで評価を伸ばした。

続くベルリン大賞では5着だったが、ティファニーから大きく離されたわけではない。今後はバーデン大賞やバイエルン大賞など2400mのG1が選択肢となり、今年のドイツ古馬中長距離では最も安定した存在と言える。

ただし、トルカータータッソや過去のドイツ国際級と比べれば、まだ「世界トップクラス」と呼べる実績には届いていない。ここが現在のドイツ競馬全体の課題でもある。

マイル・短距離は中長距離ほど強くない

一方、1600m以下では明確な世界級スターがいない。独2000ギニーでは英国のタイトルロール、シェイエムが1、2着を占め、ドイツ調教馬最先着はルーカス(Loucas)の3着。独1000ギニーも英国のタイムフォーショーケーシングが勝ち、ドイツ馬は4着以下だった。

短距離ではパーシングが8月の1200mリステッドを快勝し、8月30日のゴールデネパイチェへ向かう。ヴィキンガー(Wikinger)も1200mリステッドを勝っているが、現状では欧州G1スプリント路線に直結する評価までは得ていない。

つまり現在のドイツ競馬は、依然として2000~2400mこそ最大の強みという伝統的な構造が続いている。

「絶対王者不在」から3歳世代の台頭へ

2026年のドイツ競馬をまとめると、現時点の二枚看板はブライトライトとソレアンガ、その後ろにセグーロ、グローバルヘルス、ダルダノスが続くと見るのが分かりやすい。

今年これまでに行われた古馬混合G1では、ダルマイヤー大賞がアイルランド調教のホタゼル、ベルリン大賞が英国調教のティファニーと外国馬が連勝しており、ドイツ調教馬はまだ古馬混合G1を勝てていない。その意味では世界最高峰の英国・フランス・アイルランド勢とはまだ差がある。

しかしベルリン大賞でブライトライトがティファニーをクビ差まで追い詰め、ソレアンガは近年でも高水準のディアナ賞馬となった。9月6日のバーデン大賞、27日のオイロパ賞は、この世代が「国内の強豪」から「世界で通用するドイツ馬」へ変われるかを測る重要な一戦となる。特にブライトライトがバーデン大賞から凱旋門賞へ進み結果を残せるなら、トルカータータッソ以降やや寂しかったドイツ国際路線に、久々の新しい主役が誕生する可能性がある。

 

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