2025/26年シーズンを終えた香港競馬は、世界的に見ても異例と言える「二枚看板」の時代にある。中距離のロマンチックウォリアー(Romantic Warrior)と短距離のカーインライジング(Ka Ying Rising)は、7月の香港チャンピオンアワードで史上初となる年度代表馬の同時受賞。2026年8月24日時点の世界ランキングでもカーインライジングは131ポンドで世界首位タイ、ロマンチックウォリアーも126ポンドと世界最高峰に位置する。では、この2頭に続いて香港競馬を背負う第3のスターは現れているのか。結論から言えば、現在の実績ならヴォイッジバブル、将来性ならマイウィッシュとインヴィンシブルアイビスが最も有力だ。

香港上位馬の現在地

馬名HKJCレーティング現在の立ち位置
カーインライジング142世界最強級スプリンター
ロマンチックウォリアー139香港中距離の絶対王者
ヴォイッジバブル(Voyage Bubble)128実績上の「第3勢力」
マイウィッシュ(My Wish)124次世代マイル王候補
ラッキースワイネス(Lucky Sweynesse)123実績豊富な古豪
ファストネットワーク(Fast Network)121短距離の国際級候補
ギャラクシーパッチ(Galaxy Patch)120マイル前後の上位常連
ヘリオスエクスプレス(Helios Express)1201400~1600mの実力馬
インヴィンシブルアイビス(Invincible Ibis)1122026年香港ダービー馬

二強の壁はあまりにも高い

カーインライジングは2025/26年シーズンを8戦8勝で終え、連勝を20まで伸ばした。豪州のジ・エベレストを含むG1級競走を次々と制し、4月のチェアマンズスプリントプライズではシャティン1200mを1分07秒10で走破。香港史上最高クラスのスプリンターという段階から、世界競馬全体のトップホースへ完全に移行した。

ロマンチックウォリアーも衰えを見せない。香港カップからスチュワーズC、香港ゴールドC、QE2世C、チャンピオンズ&チャターCまでG1を5勝し、1600m・2000m・2400mの香港三冠も達成。獲得賞金は2億8870万香港ドルを超えた。8歳となる新シーズンでも、中距離でこの馬を明確に上回る香港馬はまだいない。

この2頭と3番手以下の差は数字にも表れている。7月末の香港内レーティングはカーインライジング142、ロマンチックウォリアー139に対し、3位ヴォイッジバブルは128。単にG1を一つ勝つだけでは「第3の世界級」とは呼びにくいほど、二強の水準が高い。

現時点の第3勢力はヴォイッジバブル

実績だけならヴォイッジバブルが明確な3番手だ。2024/25年にはスチュワーズC、香港ゴールドC、チャンピオンズ&チャターCを制して香港三冠を達成し、2025年12月には香港マイルを連覇。G1・6勝を誇り、本来なら単独でも香港を代表できる実績を持つ。

ただし2026年に入ってからはロマンチックウォリアーに敗れ、春には左前脚の肘腫で調整にも影響が出た。レーティングも一時134から128まで下がっている。新シーズンで復調すれば依然としてマイル~中長距離の大物だが、年齢的にも「二強の次を担う新星」というより完成された古豪と見る方が自然だ。

最も現実的な後継候補はマイウィッシュ

そこで注目したいのがマイウィッシュだ。2025/26年は105で始まったレーティングを124まで上げ、4月のチャンピオンズマイルで待望のG1初制覇。後方から大外を伸び、キャップフェラットや海外勢を差し切った内容は高く評価できる。

1600mではすでに香港トップレベルに到達しており、シーズン前半にはG3セレブレーションC、G2シャティントロフィーも勝利。チャンピオンズマイル直前のG2ではラッキースワイネスと短アタマ差だった。小柄ながら末脚の破壊力が高く、ヴォイッジバブル世代からマイル王座を引き継ぐ可能性は十分ある。

ただし二強と並ぶには、香港マイルのような国際G1で外国の一線級を倒す実績が欲しい。新シーズン最大の試金石は12月の香港国際競走となる。

一番大きな伸びしろはインヴィンシブルアイビス

将来性という意味ではインヴィンシブルアイビスがさらに面白い。2025/26年をレーティング55で始めながら急成長し、3月の香港ダービーを1馬身1/4差で制覇。わずか約10か月でレーティング112まで上昇し、年度表彰では最優秀4歳馬と最高進歩馬の二冠に輝いた。

さらに価値が高いのが次走のチャンピオンズマイルだ。ダービーの2000mから1600mへ一気に短縮し、古馬との定量G1に初挑戦しながらマイウィッシュからわずか1馬身差の4着。キャリアの浅さを考えれば、内容は勝ち馬以上に将来性を感じさせるものだった。

香港ではゴールデンシックスティやロマンチックウォリアーも4歳シリーズから古馬王道路線へ飛躍した。インヴィンシブルアイビスが新シーズンに120台前半までレーティングを伸ばし、2000mのG1を勝つようなら「次の香港の顔」という評価が一気に現実味を帯びる。

短距離ではファストネットワークが海外で試される

短距離の二番手グループではファストネットワークが興味深い。香港スプリントなどでカーインライジングの後ろに入り続け、現在のレーティングは121。国内では絶対王者がいるためG1を勝つハードルが極端に高いが、だからこそ2026年秋は日本へ遠征予定で、セントウルSからスプリンターズSを目指す。

ここで日本のトップスプリンターを破れば、「カーインライジングに勝てないだけで世界級」という評価を証明できる。ラッキースワイネスも復活後に1600mのG2を勝ったが、故障歴と年齢を考えれば、短距離の次世代を担う意味ではファストネットワークの方が注目度は高い。

「第3のスター」はすでに候補が見えている

現在の香港は、二強が強すぎるため他馬が弱く見えやすい。しかしヴォイッジバブルはすでにG1・6勝、マイウィッシュはG1マイラーへ成長し、インヴィンシブルアイビスはダービーから古馬G1まで一気に駆け上がった。層そのものが薄いわけではない。

焦点は、この中から国際G1を複数勝ち、海外でも主役になれる馬が現れるかにある。現時点の序列ならヴォイッジバブルが3番手だが、2026/27年以降を考えるなら本命はマイウィッシュ、最も夢があるのはインヴィンシブルアイビス。さらにファストネットワークが日本遠征で結果を残せば短距離から第三極が生まれる可能性もある。ロマンチックウォリアーがキャリア終盤へ向かう中、香港競馬の次の数年を占う最大のテーマは、まさにこの「二強の次」を誰が埋めるのかという一点になりそうだ。

 

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