次に「パート1」へ昇格する競馬国はどこか?|サウジ、イタリア、韓国、バーレーンを比較

世界の競馬開催国は、国際セリ名簿基準をまとめた「International Cataloguing Standards Book(通称ブルーブック)」でパート1、パート2、パート3に区分されている。パート1のG1・G2・G3は世界の主要セリ名簿でもその格がそのまま認められるのに対し、パート2国内のG1・G2・G3は原則として国際的にはリステッド相当として扱われる。ただしパート2国でも、一定水準を満たした個別競走だけをパート1の「Other Races」(その他のレース)に掲載し、国際G1~G3として認定することはできる。
2026年版でパート2に属するのはバーレーン、インド、イタリア、韓国、マレーシア、パナマ、プエルトリコ、サウジアラビア、スカンジナビア、トルコ、ベネズエラ、ジンバブエ。スウェーデン、デンマーク、ノルウェーはブルーブック上では「スカンジナビア」として一括されている。
目次
Toggleパート1へ上がるには何が必要なのか
現在、実際の格付け審査を担うのは国際競馬統括機関連盟(IFHA)の国際格付・番組企画諮問委員会(IRPAC)で、その決定を国際サラブレッド競売人協会(SITA)が承認する仕組みになっている。パート1は単に「大レースが一つある国」ではなく、世界の主要競馬国としての規模と質を求められる。
原則として必要なのは「国際G1を2競走以上」、または「国際G1を最低1つ含む国際グループ競走10競走以上」。加えて出走馬数、競走数、賞金総額、ブラックタイプ競走の比率、国外馬への開放度、国内馬の海外成績、レーティングによる品質管理なども審査される。
直近ではウルグアイが2025年にパート2からパート1へ復帰した。昇格時には国際G1が2競走、G2が4競走、G3が18競走あり、「国内のトップ競走群そのものが国際的な格付け体系として成立している」状態だった。
最有力はサウジアラビア
現状で最もパート1に近いのはサウジアラビアだろう。
2026年には2000万ドルのサウジカップに加え、ネオムターフカップもG1へ昇格。さらにリヤドダートスプリント、1351ターフスプリント、レッドシーターフがG2、サウジダービーと二聖モスクの守護者杯がG3となり、計7競走が国際グループ競走としてパート1の「その他のレース」に掲載されている。
つまりサウジはすでに「国際G1を2競走」という最低条件をクリアした。2025年統計でも3630頭が出走し、1056競走を開催。ブラックタイプ競走は11競走で全体の約1%にすぎず、ブラックタイプ1競走当たりの出走馬数も十分に多い。
何よりサウジアラビアジョッキークラブ(Jockey Club of Saudi Arabia)自身が、2021年にパート2へ昇格した後、次の目標としてパート1入りを長期戦略に掲げている。世界最高賞金級の競走、国際馬の継続的な誘致、芝とダート双方のG1整備まで進んでおり、「いつ上がっても不思議ではない」段階に最も近い。
イタリアは「復帰候補」として要注目
次に面白いのがイタリアだ。かつてパート1国だったが、賞金の長期未払いなど運営上の問題から2015年にパート2へ降格した。
2026年現在でも国際G2・G3を21競走持っており、競走体系の厚みだけならパート2勢で突出している。しかしG1が一つもないため、パート1昇格の最低条件を満たせない。
状況は少しずつ変わっている。欧州パターン委員会は2026年、賞金支払いの正常化や行政手続きの改善を評価し、イタリアに対する制裁リスクを解除した。さらにミラノのジョッキークラブ大賞を将来G1へ昇格させる構想があり、賞金も50万ユーロへ倍増された。
逆に2026年にはリディアテシオ賞、ローマ賞、ドルメーロ賞がG2からG3へ降格しており、競走の質はまだ不安定だ。ただしG1を一つ取り戻せれば「10以上のグループ競走+G1」という形式的条件を一気に満たすため、制度面ではサウジに次ぐ注目国と言える。
韓国は中期的な有力候補
韓国も着実に階段を上っている。2016年にパート3からパート2へ昇格し、2019年にはコリアカップとコリアスプリントが国際G3となった。2026年にはコリアカップがさらにG2へ昇格している。
国内ではグランプリ、大統領杯など独自のG1・G2体系を整備し、レーティングによる昇降格基準も導入。KRAは毎年、国際認定を希望する競走をアジア・パターン委員会へ申請する制度を明文化している。
ただし2026年時点で国際格付けを持つのはコリアカップG2とコリアスプリントG3の2競走のみ。パート1入りには国際G1の誕生と、より多くの国内重賞を国際グループ競走へ育てる必要がある。サウジより時間はかかるが、競走数・出走馬数・運営制度の基盤は十分大きく、中期的には有力だ。
バーレーンは急成長中
バーレーンは2021年にパート2へ昇格したばかりだが、成長速度は速い。バーレーンインターナショナルトロフィーは2019年創設からわずか7年で、2026年に同国初の国際G1へ到達した。
キングスカップ、クラウンプリンスカップなども国際G3となり、海外馬向けシリーズも拡大している。ただし国全体では年間約200競走規模と小さく、国際グループ競走もまだ少ない。まずはG2・G3を増やし、G1をもう一つ育てられるかがポイントになる。
その他のパート2国はまだ距離がある
トルコは年間3500競走以上を行う巨大市場だが、国際認定されているのはボスポラスカップとトプカプトロフィーのG3が中心。国内ブラックタイプが多すぎる点も国際基準との調整が必要になる。
インドも国内G1は多数存在するが、国際グループ競走として認定された競走がなく、海外との競走交流も限定的。スカンジナビアでは逆に2026年にスカンジナビアンオープン選手権がG3からリステッドへ降格しており、パート1への距離は広がっている。
マレーシア、パナマ、プエルトリコ、ベネズエラ、ジンバブエも、現状では競走の国際的な質やグループ競走数という点で昇格を議論する段階には達していない。
結論|次はサウジ、最大の伏兵はイタリア
2026年8月時点で順位を付けるなら、1位サウジアラビア、2位イタリア、3位韓国、4位バーレーンと考える。
サウジはすでに最低条件を満たし、主催者自身がパート1を目標としているため圧倒的な本命。イタリアはG1復活さえ実現すれば、既存の厚いパターン競走体系を生かして再昇格へ急接近する。韓国とバーレーンは国際競走を一段ずつ育てている段階だ。
次のパート1昇格は「新興国の急成長」という意味ではサウジが最も自然だが、その後には復権を目指すイタリアと、アジア・中東の韓国、バーレーンが続く。世界の競馬勢力図は、欧米中心から少しずつ変わり始めている。
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