2026年8月22日、米国カリフォルニア州のデルマー競馬場でG1「パシフィッククラシック」が行われる。ダート2000m、賞金総額100万ドルを誇る米西海岸を代表する古馬中距離戦で、勝ち馬には10月31日のブリーダーズカップクラシックへの優先出走権が与えられる。

日本から挑むのは、羽田盃、東京ダービーを連勝して「ダート2冠」を達成した3歳馬フィンガー。ジャパンダートクラシックで国内3冠を狙う道ではなく、あえて米国古馬G1へ挑戦することを選んだ。戸崎圭太騎手とのコンビで3番枠から世界へ挑む。

パシフィッククラシック2026出走馬

馬名主催者想定
1オムエンジョイ20倍
2フォージドスティール6倍
3フィンガー9倍
4サブサナドール13倍
5マラルチャク11倍
6オリジナルシン16倍
7ヒットショー7倍
8ブリティッシュアイルズ13倍
9ナバホウォリアー9倍
10フルセラーノ9倍
11ナイツブリッジ3.5倍

主催者のモーニングラインではナイツブリッジが1番人気。フィンガーはナバホウォリアー、フルセラーノと並ぶ4番人気タイの評価となっている。

フィンガー|日本のダート3冠より米G1を選択

フィンガーは父ガンランナー、母エスティロタレントーソという米国色の濃い血統を持つ3歳牡馬。ここまで8戦4勝、2着4回と一度も連対を外していない。

2026年は1月の未勝利戦を9馬身半差で圧勝すると、船橋のブルーバードCを制覇。京浜盃2着を経て羽田盃、東京ダービーを連勝した。

特に羽田盃と東京ダービーでは、自ら先頭に立って一定のラップを刻み、直線でも簡単には止まらない持続力を披露している。瞬間的な切れ味というより、高い巡航速度を長く維持するタイプであり、米国ダート競馬との相性には期待が持てる。

今回は初の海外遠征に加えて、米国式の速い序盤、キックバック、左回りへの対応が課題となる。ただし左回りについては船橋のブルーバードCを勝っており、未知数ではあっても全く経験がないわけではない。

さらにフィンガーは今回唯一の3歳馬。古馬が124ポンドを背負うのに対して118ポンドで出走でき、約2.7kgの斤量差を得られる。日本での国際レーティングは116。完成度では古馬の一線級に挑む立場だが、成長力と斤量を考えれば十分に勝負になる。

最大のライバルはナイツブリッジ

1番人気に支持されるナイツブリッジは、ゴドルフィン所有、名伯楽ビル・モット厩舎の5歳馬だ。

今年はフレッドフーパーS、ガルフストリームパークマイルと重賞を連勝。G1メトロポリタンHでは当時の米国ダート界トップクラスだったナイソスの2着に入り、前走モンマスCではさらに強烈なパフォーマンスを披露した。

初めての2ターン戦だったにもかかわらず、先手を取ると4コーナーから後続を突き放し、10馬身4分の1差の圧勝。Beyerスピード指数122は2026年の米国競馬でも最高水準の数字だった。

弱点を挙げるなら2000mの経験がなく、前走も少頭数で楽に逃げられたこと。そして今回は最外11番枠となったことだ。フィンガー、フォージドスティール、ナバホウォリアーなど前へ行きたい馬が多く、前走のような単騎逃げには持ち込みにくい。

それでも能力の天井という意味では今回最も怖い相手である。

フォージドスティール|2000mなら実績十分

2番人気想定のフォージドスティールも強力だ。

5月にサンタアニタで行われたG2ハリウッドゴールドCでは、今回と同じ2000mを逃げ切り、9馬身半差の圧勝を演じた。この条件で既に結果を出している点はナイツブリッジより明確な強みとなる。

前走サバーバンSはスタートで後手を踏んで5着。持ち味である先行力を使えなかっただけに、結果だけで評価を落とす必要はない。

今回は2番枠。すぐ外にフィンガーが入ったため、序盤から日本馬と直接位置を争う可能性が高い。フィンガーにとって最初に越えなければならない壁とも言える。

ヒットショー|実績なら文句なしの最上位

格で選ぶならヒットショーを忘れてはいけない。

2025年ドバイワールドCではミクスト、フォーエバーヤングらを破って世界の頂点に立った。通算獲得賞金は950万ドルを超え、米国内外で数多くの重賞を勝ってきた歴戦の6歳馬である。

2026年のドバイWCは5着、その後ブレイムS3着、サバーバンS2着と勝ち切れていないが、後方から差すタイプだけに今回は展開が向きそうだ。

フィンガー、フォージドスティール、ナバホウォリアー、ナイツブリッジなど先行馬が多く、前半から流れれば最後に浮上するのはヒットショー。フィンガーが前で勝負する以上、最も警戒したい「後ろから来る馬」である。

ナバホウォリアー|勢いならトップクラス

9番枠ナバホウォリアーも面白い存在だ。

今年5月のピムリコスペシャルを2馬身3/4差で逃げ切ると、続くコーンハスカーHも3馬身半差で完勝。現在の勢いなら上位人気馬にも負けない。

問題はナイツブリッジ同様、前へ行きたいタイプであること。フィンガーにとってナバホウォリアーが外からどこまで主張してくるかは非常に重要になる。

戸崎騎手が無理にハナを主張すればハイペースになり、ヒットショーら差し馬の思うつぼ。ナバホウォリアーを行かせて2、3番手に控える選択肢も考えられる。

フルセラーノは「デルマー巧者」

人気以上に怖いのがフルセラーノだ。

2024年のパシフィッククラシックでは逃げてミクストの2着。差はわずか半馬身だった。続く同年のBCダートマイルではG1制覇を達成している。

さらに2025年にもデルマーの条件戦を圧勝しており、この競馬場への適性はメンバー屈指。近走はピーク時ほどの数字を残せていないものの、デルマーへ戻ることで一変しても不思議ではない。

管理するジョン・サドラー調教師は2018年以降だけでパシフィッククラシックを4勝。コースを知り尽くした陣営という点も不気味だ。

展開の鍵は「フィンガーが逃げるのか」

今年のパシフィッククラシックは先行タイプが非常に多い。

内からフォージドスティール、フィンガー、外にはナバホウォリアー、ナイツブリッジ、フルセラーノ。単純にフィンガーが日本で行ってきたような楽な逃げを打てる可能性は低い。

そこで注目したいのが戸崎騎手の判断だ。

フィンガーは前に行けばしぶとい一方、必ずしも「逃げなければ走れない馬」と決まったわけではない。3番枠から好発を決め、内のフォージドスティールを見ながら2、3番手で折り合えるなら理想的だ。

逆に外からナバホウォリアーやナイツブリッジまで一気に主張してくれば、序盤から米国らしい消耗戦になる。

結論|絶対王者不在、フィンガーにもチャンスあり

今年は当初有力視されていたナイソスが引退し、米西海岸の絶対的な王者が不在となった。そのため日本の3歳馬がいきなり挑むG1としては、例年以上にチャンスのある顔ぶれと言える。

能力の最大値ならナイツブリッジ、2000m実績ならフォージドスティール、格ならヒットショー、勢いならナバホウォリアー、コース適性ならフルセラーノ

フィンガーはその全てに挑む立場だ。

ただし3歳の斤量差、3番枠、2000m実績、米国向きの血統、8戦すべて連対という安定感は魅力。東京ダービーを勝った日本の3歳馬が、そのわずか2カ月後に米国古馬G1を制することになれば、日本ダート競馬にとっても大きな意味を持つ。

そして勝てば次はBCクラシック。フォーエバーヤングら世界トップクラスが待つ秋の大一番へ向け、フィンガーの真価が問われる米国初戦となる。

 

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