2026年10月4日にパリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞。欧州最高峰の一戦は実力だけで決まるレースではなく、秋のフランス特有の馬場、枠順、斤量差、道中の位置取りなどが結果を大きく左右する。そこで今回は2016~2025年の過去10回について、馬場状態、上位3頭の性齢・ゲート番・調教国・JRA単勝人気に加え、勝ち馬の前走、脚質、JRA発売の配当まで整理した。なお2016、2017年はロンシャン改修工事のためシャンティイで開催されており、枠順傾向を見る際には注意したい。

過去10年の上位3頭

馬場1着2着3着
2016ファウンド
牝4・12番・愛・3人気
ハイランドリール
牡4・11番・愛・9人気
オーダーオブセントジョージ
牡4・16番・愛・8人気
2017エネイブル
牝3・2番・英・1人気
クロスオブスターズ
牡4・3番・仏・8人気
ユリシーズ
牡4・1番・英・5人気
2018エネイブル
牝4・6番・英・1人気
シーオブクラス
牝3・15番・英・3人気
クロスオブスターズ
牡5・9番・仏・9人気
2019ヴァルトガイスト
牡5・3番・仏・9人気
エネイブル
牝5・9番・英・1人気
ソットサス
牡3・1番・仏・3人気
2020不良ソットサス
牡4・4番・仏・5人気
インスウープ
牡3・1番・仏・4人気
ペルシアンキング
牡4・7番・仏・3人気
2021トルカータータッソ
牡4・12番・独・13人気
タルナワ
牝5・3番・愛・2人気
ハリケーンレーン
牡3・2番・英・1人気
2022アルピニスタ
牝5・6番・英・2人気
ヴァデニ
牡3・2番・仏・7人気
トルカータータッソ
牡5・18番・独・6人気
2023稍重エースインパクト
牡3・8番・仏・1人気
ウエストオーバー
牡4・1番・英・2人気
オネスト
牡4・9番・仏・13人気
2024ブルーストッキング
牝4・3番・英・2人気
アヴァンチュール
牝3・4番・仏・7人気
ロスアンゼルス
牡3・10番・愛・6人気
2025ダリズ
牡3・2番・仏・10人気
ミニーホーク
牝3・1番・愛・2人気
ソジー
牡4・3番・仏・5人気

※枠順はゲート番、人気はJRA発売の単勝人気。

勝ち馬の前走・脚質・配当

勝ち馬の前走前走着順脚質単勝3連単
2016愛チャンピオンS2着中団差し780円380,060円
2017ヨークシャーオークス1着好位差し180円10,600円
2018セプテンバーS1着好位差し170円10,850円
2019フォワ賞1着中団差し3,440円32,990円
2020愛チャンピオンS4着好位差し1,220円101,080円
2021バーデン大賞1着中団差し11,050円246,370円
2022ヨークシャーオークス1着好位差し580円18,400円
2023ギヨームドルナノ賞1着追込280円42,370円
2024ヴェルメイユ賞1着好位差し560円42,620円
2025プランスドランジュ賞2着中団差し2,320円112,570円

※脚質は当日の実際の位置取りを基に便宜的に分類。

最大の特徴は「道悪が通常」と考えるべき馬場傾向

10年間で良馬場だったのは2016年と2018年のわずか2回。2023年の稍重を含めれば、10回中8回が良馬場以外で行われた。特に2019年重、2020年不良、2021年重、2022年重と4年連続でタフな馬場となり、2024、2025年も重馬場だった。凱旋門賞では「良馬場ならどうか」より、柔らかい芝でも2400mを最後まで走り切れるかを優先して考えた方がいい。

一方で、2023年のエースインパクトのように比較的走りやすい馬場になれば、後方から一気に加速するタイプの瞬発力が生きる。つまり馬場発表だけを見るのではなく、開催週の降雨量と実際の時計を確認し、パワー型優勢かスピード型優勢かを判断することが重要となる。

年齢は3~5歳に完全に集中、中心は4歳馬

上位3着30頭を年齢別に集計すると、3歳11頭、4歳13頭、5歳6頭。6歳以上は一頭も3着以内に入っていない。勝ち馬に限っても3歳3勝、4歳5勝、5歳2勝で、最も安定しているのは4歳馬だった。

牝馬の強さも凱旋門賞を語るうえで欠かせない。ファウンド、エネイブル2回、アルピニスタ、ブルーストッキングと牝馬が10年間で5勝。牡馬・牝馬がちょうど5勝ずつとなっている。凱旋門賞では牝馬に牡馬より1.5kg軽い斤量が設定されるため、トップクラスの牝馬なら性別を理由に評価を下げる必要はない。

枠順は内が優勢。ただし「外枠即消し」は危険

過去10年の勝ち馬ではゲート1~6番が7勝。ロンシャン開催に戻った2018年以降に限定しても8回中6勝を占める。上位3頭まで広げても、2018~2025年の24頭中15頭が1~6番ゲートだった。

特に直近は顕著で、2024年が3番→4番→10番、2025年は2番→1番→3番。多頭数の2400mでは外枠から内へ入れるために余計な脚を使う可能性があり、内でロスなく運べる馬のメリットは大きい。ただし2018年シーオブクラスは15番から2着、2022年トルカータータッソは18番から3着。能力が高ければ外枠を克服できるため、外枠は減点材料ではあっても機械的な消し材料にはできない。

調教国はフランスとイギリスが圧倒的

上位3着30頭を調教国別に見ると、フランス13頭、イギリス9頭、アイルランド6頭、ドイツ2頭。フランスとイギリスだけで22頭、全体の73%を占める。勝利数もフランス4勝、イギリス4勝、アイルランド1勝、ドイツ1勝で、日本調教馬を含むそれ以外の国から勝ち馬は出ていない。

地元フランス勢はロンシャンのコースや馬場への経験が豊富で、イギリス勢はキングジョージやヨークシャーオークスなど欧州2400m路線の最高峰から参戦する馬が強い。2021年トルカータータッソ、2022年同馬3着に代表されるドイツ馬は数こそ少ないものの、道悪になった際には軽視できない存在だ。

前走は「凱旋門賞前哨戦必須」ではない

勝ち馬10頭中、前走を勝っていた馬は7頭。基本的には好調を維持したまま本番を迎える馬が強い。ただしフランスの伝統的な前哨戦から勝ったのは、フォワ賞からのヴァルトガイスト、ヴェルメイユ賞からのブルーストッキングなど一部にとどまる。

ヨークシャーオークスからエネイブル、アルピニスタ、バーデン大賞からトルカータータッソ、ギヨームドルナノ賞からエースインパクトとローテーションは多彩。さらに2018年エネイブルはオールウェザーのセプテンバーSから優勝している。重要なのは「どの前哨戦を使ったか」よりも、そこで能力を出し切らず良い状態で本番へ入れるかだろう。

人気馬は強いが、定期的に大波乱が起こる

1~3番人気の勝利は10年間で6回。その一方、2019年ヴァルトガイストが9番人気、2020年ソットサスが5番人気、2021年トルカータータッソが13番人気、2025年ダリズが10番人気で勝利しており、人気だけで絞り込むのは危険だ。

3連単も2017年10,600円、2018年10,850円、2022年18,400円のように比較的平穏な年がある一方、2016年380,060円、2020年101,080円、2021年246,370円、2025年112,570円と10万円超が4回。10年間の3連単平均は約99,800円だが、中央値は約42,500円で、大波乱の年が平均を大きく押し上げている。

脚質は「逃げ切り」より好位~中団からの差し

過去10年の勝ち馬に逃げ切った馬はいない。エネイブル、ソットサス、アルピニスタ、ブルーストッキングなどは好位から抜け出し、ファウンド、ヴァルトガイスト、トルカータータッソ、ダリズは中団から差した。エースインパクトだけは後方待機から豪快に差し切っている。

ロンシャンでは直線だけの瞬発力勝負というより、フォルスストレートから加速しながら長く脚を使う能力が重要になる。2026年を予想する際も、3~5歳、英仏を中心とする欧州調教馬、内~中枠、道悪への適性、好位~中団から長く末脚を使えるタイプを基本線としたい。ただし凱旋門賞は馬場と枠順によって勢力図が一変するレースでもある。最終的には開催週の天候とゲート番を加え、それまでの評価を大胆に組み替えることが攻略への近道となる。