9月6日、香港・シャティン競馬場で行われた香港特別行政区行政長官杯(G3、芝1200メートル)で、世界最強スプリンターのカーインライジングが圧倒的な強さを見せた。ザック・パートン騎手を背にスタートから先頭へ立つと、そのまま後続を寄せ付けず7馬身3/4差の大勝。勝ち時計1分06秒11は従来のコースレコード1分07秒10を0秒99も更新する驚異的なタイムとなり、自身が持つ香港調教馬の最多連勝記録も「21」まで伸ばした。

61.2キロを背負って他馬を圧倒

2026/27年香港シーズンの開幕日に行われた香港特別行政区行政長官杯は、今年からG3に格上げされたハンデ戦。カーインライジングにはトップハンデ135ポンド、約61.2キロが課された。一方でライバルの多くは115ポンド、約52.2キロ。実に約9キロもの重量差があり、通常なら決して楽な条件ではなかった。

それでもレースが始まれば、ハンデ差を感じさせる場面は一度もなかった。最内1番枠から好スタートを決めると、そのまま先頭へ。最初の400メートルを23秒27で通過し、パートン騎手の手綱には十分な余裕を残したまま直線へ向かった。

ここからが圧巻だった。残り400メートルからさらに加速し、後続との差は広がる一方。今回はパートン騎手も最後までしっかり走らせ、2着コパートナープランスに7馬身3/4差をつけてゴールした。3着マジックコントロールはさらに後方で、カーインライジングから9馬身1/4差。6頭立てとはいえ、重賞としては異例のワンサイドゲームだった。

1分07秒10から一気に1分06秒11へ

さらに衝撃的だったのが勝ち時計だ。1分06秒11はシャティン芝1200メートルのコースレコード。しかも従来記録の1分07秒10も、今年4月のチェアマンズスプリントプライズでカーインライジング自身が記録したものだった。

その記録を0秒01、0秒1ではなく、いきなり0秒99短縮したことになる。1200メートルという短距離戦で約1秒のレコード更新は極めて大きく、しかも今回は定量のG1ではなく61キロ以上を背負うハンデ戦だった。

カーインライジングはこれまでにもシャティンの1200メートルや1400メートルでレコードを更新してきたが、今回の1分06秒11はその中でも異次元と言える数字。デヴィッド・ヘイズ調教師も、レース前の馬場状態からレコード更新の可能性を感じていたというが、従来記録を約1秒も縮める結果は想像を上回るものだった。

サイレントウィットネスを超えた記録は21連勝へ

カーインライジングのもう一つの記録が連勝数だ。香港ではかつて名スプリンターのサイレントウィットネスが17連勝を記録し、20年以上にわたり香港調教馬の最多連勝記録として君臨していた。

カーインライジングは今年1月に17連勝でその記録に並び、2月のクイーンズシルヴァージュビリーカップで18連勝として新記録を樹立。その後もスプリントカップ、チェアマンズスプリントプライズを勝ち、20連勝で前シーズンを終えていた。

そして約4カ月半ぶりとなった今回も勝利。連勝記録はついに21まで伸びた。

現在の通算成績は23戦21勝、2着2回。2023年12月のデビュー戦を勝った後、2024年1月の2戦でいずれも僅差2着に敗れているが、同年2月12日の勝利を境に一度も負けていない。一般戦から重賞、香港のG1、さらにはオーストラリア遠征まで、条件や相手が変わっても勝ち続けている点に、この馬の異常なまでの強さが表れている。

小さな不安を吹き飛ばしたシーズン初戦

実は今回、レース前にはわずかな不安もあった。週初めに左後肢の蹄を痛め、ヘイズ調教師によれば飼い葉桶を蹴ったことによる打撲とみられていた。CTやレントゲンなどの検査が行われ、異常がないことを確認した上で出走に踏み切っている。

さらに休養明けで馬体重は1172ポンド。前走時より29ポンド増えており、陣営が「以前より大きく、強くなった」と話していた通り、6歳になっても成長を続けていることをレースで証明した形だ。

香港特別行政区行政長官杯はこれで3年連続制覇。パートン騎手はレース後、「この一戦を使えばさらに良くなる」という趣旨のコメントを残しており、今回がピークではない可能性すらある。

次はジ・エベレスト連覇へ

次の大目標は10月17日にオーストラリア・ランドウィック競馬場で行われるジ・エベレスト。カーインライジングは昨年、香港調教馬として初めて同レースを制しており、今年は連覇を目指して再びオーストラリアへ遠征する。

昨年は香港を離れて環境が変わる中でも勝利したが、陣営は今年、さらに良い状態で本番へ送り出すことを目標としている。今回のレース後は検疫施設へ移動し、2週間以内にオーストラリアへ向かう予定だ。

61キロを超える斤量を背負い、7馬身3/4差で圧勝し、自身のコースレコードを約1秒更新。それでも陣営から「まだ良くなる」という言葉が出る。21連勝まで到達したカーインライジングは、もはや香港競馬の歴史を更新するだけでなく、世界競馬史にどこまで名前を残すのかという段階に入った。次なる焦点はジ・エベレスト連覇、そしてこの連勝記録がどこまで続くかだ。

 

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