大分県北部の中心都市・中津市。福沢諭吉の旧居など歴史的建造物が残るこの街には、かつて九州競馬の一角を担い、地域に根ざした極小のコースを持っていた「中津(なかつ)競馬場」が存在しました。しかし、中津競馬場が日本の競馬史において最も強烈な記憶として残っている理由は、そののどかな環境とは裏腹に、全国の公営競技界を震撼させた「あまりにも突然すぎる廃止劇」にあります。当時の議会記録や報道資料に基づき、その激動の歴史と現在の姿を詳解します。

中津競馬場の基本情報

項目詳細情報
所在地(廃止時)大分県中津市大字合馬(おうま)
開場年1933年(昭和8年)
廃止年2001年(平成13年)3月22日(最終開催)
開催されていた競技地方競馬(平地競走:ダートのみ)
主催者中津市

歴史と沿革:大貞公園に隣接した市民の娯楽

中津における競馬の歴史は、1933年(昭和8年)に大貞公園の隣接地に競馬場が開設されたことに始まります。戦後の1948年(昭和23年)から公営競馬としてスタートし、荒尾・佐賀とともに「九州競馬」の一角として、相互に競走馬が遠征し合うブロック体制を構築しました。

コースは1周1000メートル、最後の直線はわずか195メートルという、地方競馬の中でも極めて小規模でタイトな右回りダートコースでした。そのため、スタートの良し悪しと強引なまでのポジション取りが勝敗を分ける、非常にギャンブル性が高くスリリングなレースが展開されていました。「中津大賞典」などの重賞競走では、小さなスタンドを埋め尽くすほどの地元ファンが押し寄せ、熱狂的なヤジと歓声が飛び交う、まさに「昭和の地方競馬」の熱気を色濃く残す場所でした。

廃止への経緯:前代未聞の「突然の廃止通告」と大混乱

中津競馬場を語る上で避けて通れないのが、2001年(平成13年)の廃止劇です。

1990年代後半からの売上低迷により、中津市の競馬事業は約21億円の累積赤字を抱えていました。しかし、他の競馬場が数年かけて廃止の議論や関係者への補償交渉を進めるのが通例であった中、中津競馬場の廃止は、誰の予想も超える劇的なスピードで強行されました。

2001年2月、当時の鈴木一郎中津市長は、市議会や競馬関係者(調教師・騎手・馬主など)に対する事前の十分な説明や協議を一切行わないまま、突如として「2001年6月3日をもって競馬事業を廃止する」と一方的に表明したのです。

あまりに突然の通告に、生活の糧を即座に奪われる形となった約400人の関係者は猛反発しました。騎手会や厩舎関係者は抗議を行い、大きな社会問題に発展しました。市側は「これ以上の赤字は市民への背信行為」と主張して譲らず、補償金の問題もこじれにこじれました。

結局、混乱と悲痛な怒号が渦巻く中、予定よりも早く2001年3月22日のレースを最後に中津競馬場は廃止されました。この「中津ショック」は、全国の地方競馬関係者に「自治体は突然事業を打ち切ることがある」という強烈な恐怖を植え付け、その後の地方競馬廃止ドミノの引き金ともなりました。

跡地の現在:スポーツと市民生活の巨大拠点「ダイハツ九州スポーツパーク大貞」へ

激動の歴史の幕引きから4半世紀近くが経過した現在、中津競馬場の跡地は、かつての暗い混乱や遺恨を完全に払拭するほどの素晴らしい「市民総合運動公園」へと見事な大変貌を遂げています。

中津市は競馬場閉鎖後、隣接する大貞公園を拡張し、敷地面積約27ヘクタールに及ぶ広大な「大貞総合運動公園(現在の愛称:ダイハツ九州スポーツパーク大貞)」としての再整備を決定しました。

かつてのメインスタンドや厩舎街が建ち並んでいたエリアには、2008年(平成20年)に最新鋭の総合体育館「中津市総合体育館(愛称:ダイハツ九州アリーナ)」が完成しました。この巨大なアリーナを中心に、敷地内には本格的な野球場(中津第一球場)、多目的グラウンド、テニスコート、大遊具広場などが機能的に配置され、週末には多くの子供たちやスポーツチームの活気であふれ返っています。

さらに興味深いのは、かつてのオーバルコースの「内馬場(ないばば)」だった土地の利用方法です。広大な内馬場跡の北半分は、幼児保育施設である「大貞こども園」の敷地になったほか、民間の生活密着型商業施設(食品スーパーの新鮮市場大貞店、ドラッグストアコスモス大貞店など)が誘致され、市民の日々の暮らしを支えるショッピングエリアとして機能しています。

現地を訪れても、かつてサラブレッドたちが激しい泥砂を巻き上げて走っていた競馬場の形跡や遺構を見つけることはほぼ不可能です。しかし、グラウンドやアリーナ、そしてショッピングセンターの並びを上空から確認すると、かつての1周1000メートルの周回コースが描いていた緩やかな曲線の名残が、敷地境界や道路の形状として今も微かに息づいていることが分かります。 かつて多くの人馬が汗を流し、激動のドラマを生んだ中津競馬場の土地は、今、形を変えて中津市民の健康、憩い、そして日々の暮らしを支えるかけがえのない大財産として、新たな輝きを放ち続けています。

 

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