競馬・競輪・ボートレース・オートレースなどの公営競技では、写真判定などを行っても着差が認められない場合、「同着」として扱われます。

同着が発生すると、単に「同じ順位が2人いる」というだけではなく、的中判定と払戻金の計算方法が通常とは変わります。

特に重要なのは、同着時の払戻金は「通常のオッズを単純に半分にする」わけではないという点です。公営競技では、パリミュチュエル方式に基づき、売上・的中票数・不的中票・払戻率を使って、法律や施行規則に沿って機械的に計算されます。

同着とは何か

同着とは、複数の出走体が決勝線をほぼ同時に通過し、写真判定などによっても明確な先着差が認められない状態のことです。

たとえば競馬で2頭が同時に1着となった場合は「1着同着」、競輪やボートレースで2選手・2艇が同時に2着と判定されれば「2着同着」となります。

公営競技では、この同着を感覚的に処理するのではなく、各競技の法律・施行規則に基づいて、的中組合せと払戻金が計算されます。

同着時のポイントは「的中組合せが増える」こと

同着が起きると、本来1つだけだった的中組合せが複数に増えます。

たとえば、1着がAとBの同着だった場合、単勝ではAもBも的中になります。馬単・車単・舟券の2連単・3連単などでも、同着した順位をもとに複数の的中パターンが発生します。

この「的中組合せが複数に増える」ことが、払戻金計算を理解するうえで最も重要です。

同着時の基本イメージ

同着の種類的中判定への影響主な影響を受ける賭式
1着同着1着候補が複数になる単勝、2連単、3連単、馬単など
2着同着2着候補が複数になる2連単、2連複、3連単、3連複など
3着同着3着候補が複数になる複勝、ワイド、3連単、3連複など

ただし、すべての組合せが無制限に的中になるわけではありません。賭式ごとに「どこまでを的中とみなすか」は定められており、特にワイドや3連系では、同着の位置によって的中対象外となる組合せもあります。

同着時の払戻金はどう決まるのか

同着時の払戻金計算の基本は、次の考え方です。

「的中組合せごとの売上」と「不的中票の売上を同着数で分けたもの」を合算し、そこに払戻率を掛ける

これを数式で表すと、以下のようになります。

払戻対象総額 T = (W + D ÷ P)× R

キャリーオーバーがある重勝式の場合は、さらにキャリーオーバー分も同着数で分けて加算します。

払戻対象総額 T = (W + D ÷ P)× R + A ÷ P

各記号の意味

記号意味説明
T払戻対象総額その的中組合せに分配される払戻原資
Wその的中組合せに投票された金額実際にその組合せを買っていた金額
D不的中票の総額的中しなかった投票券の売上合計
P的中組合せの数同着によって発生した的中パターンの数
R払戻率賭式ごとに定められた払戻割合
Aキャリーオーバー金額重勝式などで前回から繰り越された金額

なぜ不的中票を同着数で割るのか

ここが最も重要です。

パリミュチュエル方式では、的中者への払戻原資は、簡単にいうと「的中票の元本」と「不的中票から生まれる分配原資」で構成されます。

同着がない場合、的中組合せは1つだけなので、不的中票から生まれる原資はその的中組合せに集まります。

しかし、同着によって的中組合せが2つになった場合、不的中票から生まれる原資を片方だけに渡すのは不公平です。そのため、不的中票の総額を的中組合せの数で等分します。

つまり、1着同着で的中組合せが2つなら、不的中票部分は2分の1ずつ。3つなら3分の1ずつです。

同着時の本質

  • 同着が起きると、的中組合せが増える
  • 的中組合せが増えると、不的中票の分配先も増える
  • そのため、不的中票の払戻原資は的中組合せ数で分割される
  • 結果として、通常時より払戻金が下がりやすくなる

これが、同着時に「オッズが下がる」「払戻金が思ったより少ない」と感じる理由です。

ただし単純に半分になるわけではない

同着時によくある誤解が、「1着同着なら払戻金は単純に半分になる」というものです。

実際には、そう単純ではありません。

なぜなら、払戻金には「その的中組合せ自体にどれだけ投票されていたか」が影響するからです。

人気の組合せと人気薄の組合せが同着で的中した場合、両者の払戻金は同じにはなりません。人気の組合せは的中票数が多いため1票あたりの払戻金は低くなり、人気薄の組合せは的中票数が少ないため1票あたりの払戻金は高くなります。

具体例で理解する同着時の払戻金計算

ここでは、わかりやすくするために単純化した例で考えます。

前提条件

項目金額・数値
総売上10,000円
払戻率75%
的中組合せAの売上400円
的中組合せBの売上200円
同着による的中組合せ数2つ

この場合、まず不的中票の総額を計算します。

不的中票 D = 10,000円 - 400円 - 200円 = 9,400円

的中組合せはAとBの2つなので、不的中票を2等分します。

9,400円 ÷ 2 = 4,700円

次に、それぞれの的中組合せに「自分自身の売上」と「不的中票の半分」を足します。

組合せ自身の売上不的中票の分配分合計
A400円4,700円5,100円
B200円4,700円4,900円

ここに払戻率75%を掛けます。

Aの払戻対象総額 = 5,100円 × 75% = 3,825円
Bの払戻対象総額 = 4,900円 × 75% = 3,675円

この払戻対象総額を、それぞれの的中票数で割って、1票あたりの払戻金を出します。

ここで重要なのは、Aは400円分買われており、Bは200円分しか買われていないという点です。

同じ不的中票の分配を受けていても、Bの方が的中票数が少ないため、1票あたりの払戻金は高くなります。

人気が低い同着側の方が払戻金の下落率は小さくなりやすい

同着時は、通常時より配当が下がりやすくなります。

しかし、人気馬・人気選手・人気艇と、人気薄が同着した場合、人気薄の方が配当下落率はマイルドになることがあります。

理由は、人気薄側はもともとの投票額が少ないため、同じだけ不的中票の分配を受けたとき、1票あたりに乗る金額が大きくなるからです。

逆に、人気側は的中票数が多いため、同じ原資を受け取っても1票あたりの金額は薄まりやすくなります。

上級者向けの理解

同着時の払戻金は、以下の2つのバランスで決まります。

  • その的中組合せがどれだけ買われていたか
  • 不的中票の原資を同着数で割った金額がどれだけ加わるか

したがって、同着時の配当は「人気順そのまま」ではなく、売上構成比によって大きく変化します。

キャリーオーバーがある場合の同着計算

WIN5や重勝式のようにキャリーオーバーがある賭式では、同着時の計算にキャリーオーバー分も加わります。

この場合の考え方はシンプルです。

キャリーオーバー金額も、的中組合せ数で分ける

払戻対象総額 T = (W + D ÷ P)× R + A ÷ P

たとえば、的中組合せが2つある場合、キャリーオーバー金額は2分の1ずつ配分されます。

つまり、同着によって的中パターンが増えると、不的中票だけでなく、キャリーオーバー分も分割されます。

実例:WIN5で1着同着が発生したケース

実際にJRAのWIN5では、対象レースで1着同着が発生し、的中パターンが2つに分かれた事例があります。

このとき、2つの的中パターンで的中票数が大きく異なっていたため、払戻金にも大きな差が出ました。

的中パターン的中票数確定払戻金
パターン1101票10,282,010円
パターン2648票1,602,650円

同じ同着による的中パターンであっても、的中票数が少ないパターンは1票あたりの分配額が大きくなります。

このため、同着時でも「どの的中組合せがどれだけ買われていたか」によって、払戻金は大きく変わります。

的中者がいない同着組合せはどう扱われるのか

同着時には、非常に重要な例外ルールがあります。

それは、同着で勝者になった組合せでも、誰も買っていなければ、払戻計算上は勝者として扱わないという考え方です。

たとえば、1着同着でAとBが勝者になったとします。

  • Aの単勝は買われていた
  • Bの単勝は1票も買われていなかった

この場合、レース結果としてはAもBも1着同着です。しかし、払戻金計算上は、誰も買っていないBを勝者として数える意味がありません。

そのため、Bは払戻計算上の勝者から除外され、的中組合せ数は2ではなく1として計算されます。

このルールがあることで、誰も買っていない組合せに払戻原資が無駄に割り振られることを防ぎ、実際に的中した購入者へ原資を適切に還元できます。

端数処理も払戻金に影響する

公営競技の払戻金は、計算結果をそのまま1円単位・小数点単位まで支払うわけではありません。

多くの場合、10円未満や1円未満の端数が切り捨てられます。

同着が発生すると、払戻原資が複数の的中組合せに分かれるため、端数処理も複数回発生します。

その結果、同着がない場合と比べて、実際に払い戻される総額がわずかに少なくなることがあります。

端数処理のポイント

  • 払戻計算では端数切り捨てが行われる
  • 同着で的中組合せが増えると、端数処理の回数も増える
  • 切り捨てられた端数は、結果的に主催者側に残る
  • そのため、実効払戻率は公称払戻率よりわずかに下がる場合がある

出走取消・返還と同着は別物

同着と混同されやすいのが、出走取消や競走除外による「返還」です。

同着は、レースが成立したうえで順位が同じになる現象です。一方、返還は、発売後に出走取消などが発生し、その対象を含む投票券が買い戻される制度です。

返還が発生した場合、その返還分は売上から除外されます。つまり、払戻計算の前提となる売上額そのものが変わります。

項目同着返還
発生タイミングレース結果確定時出走取消・競走除外など
扱い的中組合せが増える該当投票券を買い戻す
払戻計算への影響不的中票やキャリーオーバーを的中組合せ数で分ける返還分を売上から除外して計算する

的中者なしの場合の特払い

通常の投票法で的中者がいない場合、キャリーオーバーではなく「特払い」が行われることがあります。

特払いとは、その賭式を購入していた人に対して、一定額を払い戻す制度です。

一般的には、払戻率70%台の賭式では100円につき70円、払戻率80%台の賭式では100円につき80円が払い戻される形になります。

ただし、重勝式のようにキャリーオーバー制度がある賭式では、的中者なしの場合に次回へ繰り越されることがあります。

同着時の払戻金を理解するための結論

同着時の払戻金を理解するうえで、最も重要なのは次の5点です。

  1. 同着が起きると、的中組合せが増える
  2. 不的中票の払戻原資は、的中組合せ数で等分される
  3. 各的中組合せの売上額によって、1票あたりの払戻金は変わる
  4. キャリーオーバーがある場合は、それも的中組合せ数で分ける
  5. 端数処理によって、実際の払戻額はさらに調整される

上級者向けまとめ

公営競技における同着時の払戻金計算は、単なる救済措置ではなく、パリミュチュエル方式の公平性を保つための数理モデルです。

通常時は1つの的中組合せに集中する払戻原資が、同着時には複数の的中組合せに分散されます。このとき、不的中票の原資を同着数で割ることで、同着したすべての的中組合せに公平な分配が行われます。

一方で、各的中組合せの売上額が異なるため、最終的な1票あたりの払戻金は同じにはなりません。人気薄の組合せほど、同じ分配原資を少ない的中票数で割るため、高い払戻になりやすい構造があります。

さらに、キャリーオーバーの分割、的中者なし組合せの除外、端数切り捨て、返還金の売上除外といった制度が重なることで、同着時の払戻金は非常に精密に調整されています。

つまり、同着時の払戻金は「通常配当を単純に割ったもの」ではなく、売上構成・的中組合せ数・払戻率・端数処理をすべて反映した、公営競技特有の高度な分配計算によって決まっているのです。

免責事項

本記事は、公営競技における同着時の払戻金計算の仕組みを解説することを目的としたものです。実際の払戻金は、各競技の主催者発表、施行規則、売上状況、端数処理、返還の有無などによって異なります。

舟券・車券・馬券等を購入する際は、必ず各公営競技の公式発表および最新の払戻情報をご確認ください。本記事は特定の投票行動を推奨するものではありません。

 

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