日本競馬には、独自のグレード格付けとして「Jpn1」「Jpn2」「Jpn3」というものがあります。これは、国際的な「G1」「G2」「G3」(Gは「グレード」もしくは「グループ」)としての格付け審査を通過していない、日本独自の格付けとなります。今回は、この「Jpn」について詳しく説明します。

そもそも「G1」って?

そもそも、「G1」の「G」は「グレード」(主に北米・日本で使用)もしくは「グループ」(ヨーロッパ・オーストラリア・香港・UAEなど多くの国で使用)の略称です。世界の数多ある競馬のレースで、「このレースは強い馬が集まっていますよ」ということを表す格付けを行うために使われています。

しかし、国がそれぞれ好き勝手に「G1」を付けてしまうと、どこの国のどのレースが本当の「G1」レベルなのかが分からなくなります。よって、国際的に「この国のこのレースはG1として認定されていてレベルも高いです」ということを表すために、国際セリ名簿基準委員会(ICSC)という団体が競馬開催国を「パート1」~「パート3」まで分類し、それぞれの国の重賞競走の格付けを行います。最高位の「パート1」に認定されて競馬レベルが認められると、その国のレースも名実共に国際的に「G1」を名乗ることが許され、同時に「国際グレード」が付いた競走は外国馬も出走可能となります。

※サウジカップなど、一部パート2国のレースも国際G1に認定される場合あり

日本のグレード制と「Jpn」の導入

日本は1984年に「G1・G2・G3」のグレード制を導入しましたが、これは国際的な基準から外れた日本独自の制度でした。2007年にICSCからパート1国に認定されると、その独自のグレード制は使えなくなり、「G1・G2・G3」全ての競走を国際競走(外国馬も出走可能な競走)にすることを迫られます。

そのため、全ての競走を国際競走化するまでの「つなぎ」として導入されたのが「Jpn」でした。日本ダービーも、2010年に国際競走となるまでの3年間は「Jpn1」として実施されています。2026年現在、中央競馬(JRA)の重賞競走は全て国際競走となっており、「Jpn」の表記はなくなっています。

地方競馬の現状

しかし、競馬を開催しているのはJRAだけではありません。地方競馬の重賞の内、JRAとの交流重賞競走(ダートグレード競走)も、JRAのそれと同様に「G1・G2・G3」扱いされています。

しかし厳密に言うと、地方競馬のダートグレード競走は国際開放されていないため、格付けは「Jpn1・Jpn2・Jpn3」となります。2026年現在、以下の競走が「Jpn」表記となっています。

JpnⅠ競走一覧

格付け競走名実施場距離
JpnⅠ川崎記念川崎2,100m
JpnⅠ羽田盃大井1,800m
JpnⅠかしわ記念船橋1,600m
JpnⅠ東京ダービー大井2,000m
JpnⅠさきたま杯浦和1,400m
JpnⅠ帝王賞大井2,000m
JpnⅠジャパンダートクラシック大井2,000m
JpnⅠマイルチャンピオンシップ南部杯盛岡1,600m
JpnⅠJBCクラシック金沢2,100m
JpnⅠJBCスプリント金沢1,400m
JpnⅠJBCレディスクラシック金沢1,500m
JpnⅠ全日本2歳優駿川崎1,600m

JpnⅡ競走一覧

格付け競走名実施場距離
JpnⅡダイオライト記念船橋2,400m
JpnⅡ京浜盃大井1,700m
JpnⅡ名古屋グランプリ名古屋2,100m
JpnⅡ兵庫チャンピオンシップ園田1,400m
JpnⅡエンプレス杯川崎2,100m
JpnⅡ関東オークス川崎2,100m
JpnⅡ不来方賞盛岡2,000m
JpnⅡ日本テレビ盃船橋1,800m
JpnⅡレディスプレリュード大井1,800m
JpnⅡ東京盃大井1,200m
JpnⅡ浦和記念浦和2,000m
JpnⅡ兵庫ジュニアグランプリ園田1,400m

JpnⅢ競走一覧

格付け競走名実施場距離
JpnⅢブルーバードカップ船橋1,800m
JpnⅢクイーン賞船橋1,800m
JpnⅢ佐賀記念佐賀2,000m
JpnⅢ雲取賞大井1,800m
JpnⅢかきつばた記念名古屋1,500m
JpnⅢ黒船賞高知1,400m
JpnⅢ兵庫女王盃園田1,870m
JpnⅢ東京スプリント大井1,200m
JpnⅢスパーキングレディーカップ川崎1,600m
JpnⅢマーキュリーカップ盛岡2,000m
JpnⅢクラスターカップ盛岡1,200m
JpnⅢ北海道スプリントカップ門別1,200m
JpnⅢブリーダーズゴールドカップ門別2,000m
JpnⅢサマーチャンピオン佐賀1,400m
JpnⅢ白山大賞典金沢2,100m
JpnⅢオーバルスプリント浦和1,400m
JpnⅢマリーンカップ船橋1,800m
JpnⅢエーデルワイス賞門別1,200m
JpnⅢJBC2歳優駿門別1,800m
JpnⅢ名古屋大賞典名古屋2,000m
JpnⅢ兵庫ゴールドトロフィー園田1,400m

長らくG1として実施されてきた川崎記念・帝王賞なども、国際開放されていないので「Jpn1」扱いとなります。地方競馬は地方馬のレベルや、外国馬の受け入れ態勢が十分ではないため、国際競走にしたくてもできないという状態でしたが、2022年にはJRAから、2028年から地方競馬においても段階的にダートグレードの廃止、2033年を目標に国際競走化に伴う国際格付けの付与が行われる旨の発表が行われています。

一つ例外として、12月29日に行われる東京大賞典は2011年に国際格付けが付与されたため、それ以降は「G1」として実施されています。

全日本2歳優駿の特殊な事情

さらにもう一つ例外として、全日本2歳優駿が挙げられます。このレースは唯一、上記のJpn競走の中で国際開放競走(2017年より)に指定されています。しかし、国際格付けは「リステッド」、つまり「G3」の下ということになります。日本で見ればJpn1(G1)、国際的に見ればG3の下という、特殊な条件に置かれているのが全日本2歳優駿です。

こういった事例は他の国、特にパート2以下の国にもたまに見られ、韓国で毎年9月に行われているコリアカップは韓国国内ではG1扱いですが、国際格付けは「G2」。つまり「韓国G1・国際G2」という不思議な格付けになっています。

「LR」って何?

最後に、「LR」という表記について説明しておきます。

「LR」とは「Listed Restricted」(リステッド・リストリクテッド)の略で、直訳すると「制限されたリステッドレース」となります。

原則としてレースを国際格付けする場合、出走条件に「性別」と「馬齢」以外の制限を設けてはいけないことになっています。たとえば生産国、生産地、調教国、血統や所属、取引様態、獲得賞金や勝利数などの条件で出走できるかどうか制約のある競走は、基本的に対象外となります。しかし、そうした制限のあるレースでもリステッド相当の格付けが与えられることがあり、そのようなレースに「LR」の表記が与えられます。

そのため、外国馬が出走できない日本のダートグレード競走は、ほぼ全て「LR」表記となります。上記の全日本2歳優駿も2017年までは「LR」表記でしたが、2018年に国際開放されたことで正式に「L」表記となりました。